身寄りのない方が亡くなった場合、遺品整理や財産の管理、葬儀の手続きなどを誰がどのように行うのか分からず、不安を感じる方も多いかと思います。特に相続人がいない場合や孤独死のケースでは、行政や専門家の関与が必要になります。
本記事では、身寄りのない人が死亡した際の流れや、遺品整理・相続・特別な手続きについて分かりやすく解説いたします。生前にできる準備についても紹介しておりますので、ぜひ参考にして下さい。
身寄りのない人が死亡した直後の対応

身寄りのない人が亡くなった場合、まずは適切な機関へ連絡し、正しい手続きを行う必要があります。突然のことでも、警察や行政に連絡することで、遺体や遺品の取り扱いがスムーズに進められます。
死亡発見後にすべきことと警察への連絡方法
身寄りのない人が亡くなっているのを発見したときは、最初に警察へ通報することが必要です。発見者が親族でなくても、遺体を見つけた時点で通報の義務があります。まずは「110番」に電話し、状況を説明してください。その際、場所・時間・遺体の状態など、わかる範囲で正確に伝えることが大切です。
警察が到着すると、現場の確認と検死が行われます。事件性がないと判断されれば、行政解剖または簡易的な検査を経て、死亡診断書または死体検案書が発行されます。この書類は、以後の火葬や行政手続きに必要です。なお、発見現場が賃貸住宅などの場合は、管理会社や大家にも連絡しましょう。
状況によっては、警察から管理会社へ連絡が入ることもありますが、発見者が主体的に動くことで、その後の手続きが円滑になります。身寄りのない方の場合でも、法律に基づいた対応が求められるため、冷静に、かつ正確に初動対応を行うことが重要です。
行政への連絡と遺体の取り扱いについて
警察による確認が終わった後、身寄りのない方が亡くなった場合には、行政(市区町村)への連絡が必要となります。通常は、警察が自治体に通知しますが、発見者が直接連絡を入れるケースもあります。自治体は、身寄りがないことを確認すると、「行旅死亡人」として扱うことになります。
行旅死亡人とは、身元や親族が判明せず、引き取り手がいないまま亡くなった方を指し、市区町村が責任を持って火葬や埋葬を行います。火葬費用などは公費で賄われ、遺骨は一定期間保管された後、無縁仏として埋葬されます。
行政はこの間、遺品や所持品を保管・調査し、身元や親族の有無を調査することになります。遺体の搬送や火葬は、行政が委託する葬儀業者が行いますが、日程や場所は自治体によって異なります。
発見者が遺体の取り扱いに関して疑問がある場合は、福祉課や生活支援課などの窓口に相談することをおすすめします。行政の対応には一定の手続きが必要なため、早めに連絡し、正しい情報を得ることが安心につながります。
遺品と財産の取り扱い方法

身寄りのない人が亡くなった場合、遺品や財産の管理は特別な手続きが必要となります。相続人がいないケースでは、家庭裁判所の関与や行政の判断が重要な役割を果たします。適切な処理を行うことが社会的にも求められます。
相続人がいない場合の遺品の管理
相続人がいない場合、遺品の管理は非常に慎重に行う必要があります。まず、遺品には現金や通帳、貴金属などの貴重品のほか、写真や衣類などの思い出の品も含まれます。相続人がいればこれらを引き取ってもらえますが、いない場合は一時的に行政や大家、管理会社などが保管するケースが多くあります。
重要なのは、勝手に遺品を処分してはいけないという点です。遺品の中には、借金の証拠や遺言書、財産につながる資料が含まれていることもあり、法的な確認が必要です。誰かが誤って処分してしまうと、後から問題になる可能性もあります。
そのため、行政や家庭裁判所に相談し、必要であれば「相続財産管理人」の選任を求めることが推奨されます。遺品は、適切に保管・記録したうえで、後の相続手続きや財産整理に備えておくことが大切です。法的なトラブルを避けるためにも、早めの対応と慎重な判断が必要です。
相続財産管理人の選任と役割
相続人がいない、または全員が相続放棄した場合、財産の管理や処分を行うために「相続財産管理人」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。この相続財産管理人は、弁護士などの専門家が選任され、故人の財産を調査・整理・管理します。
具体的には、通帳や現金、不動産、家財などを調べて、債務(借金)があれば返済し、残った財産を最終的に国庫へ帰属させる役割を担います。また、必要があれば遺品の処分や部屋の片づけなども実施されることがあります。相続財産管理人の選任には、申立人が裁判所に申立書と必要書類(住民票、戸籍など)を提出する必要があります。
手続きには時間と費用がかかりますが、第三者による公正な管理が保証されるため、トラブル防止の観点からも非常に重要です。相続人が不在でも、法的手続きをきちんと踏むことで、故人の財産が適切に処理され、周囲の混乱を避けることができます。
財産が国庫に帰属するケース
相続人がいない場合や、全員が相続を放棄した場合、最終的に故人の財産は国に引き継がれます。これを「国庫に帰属する」と言います。この流れは、相続財産管理人によって財産の整理が終わったあとに行われ、借金などの債務が清算されたうえで、残った財産が対象になります。
国に帰属する財産には、現金、不動産、株式などさまざまな資産が含まれます。なお、この帰属手続きは自動的に行われるわけではなく、相続財産管理人の報告や家庭裁判所の許可を経て実施されます。一般の人が勝手に財産を処分したり使用したりすると、法的な責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
また、特別縁故者(長年にわたり故人の面倒を見ていた人など)がいれば、家庭裁判所に申し立てを行い、一部または全部の財産を受け取れる可能性もあります。財産が無駄なく使われるよう、法的な枠組みにそった処理が求められるのです。
遺品整理の進め方と費用の実態

遺品整理は、故人が残した物品や財産を整理し、処分・管理する大切な作業です。身寄りのない方が亡くなった場合には、行政や専門業者の関与も必要となるため、流れや費用について正確に理解しておくことが重要です。
遺品整理の流れと必要な準備
遺品整理は計画的に進めることで、混乱や無駄な出費を避けることができます。まず最初に行うべきは、部屋全体の状況確認です。どの程度の量があるか、貴重品や重要書類がどこにあるかを把握することが大切です。次に、「残すもの」「捨てるもの」「供養が必要なもの」などに分類していきます。
判断に迷うものは、一時保留としておくとよいでしょう。整理の際には、軍手やゴミ袋、マスク、段ボールなどを準備し、安全に作業できる服装で取り組んでください。また、大型の家具や家電の処分が必要な場合は、事前に自治体の粗大ゴミ回収の申し込みやリサイクル券の購入も必要です。
身寄りのない方の遺品整理では、相続財産管理人や行政が関与するケースもあるため、勝手に処分を始めるのではなく、関係機関と相談してから着手することが重要です。正しい手順をふむことで、法的なトラブルや後悔を避けることができます。
遺品整理の費用相場と内訳
遺品整理にかかる費用は、部屋の広さや物の量、作業の内容によって大きく異なります。たとえば、1Kのワンルームでは3万円〜8万円ほど、2LDKの場合は10万円〜30万円程度が一般的な相場です。費用の内訳は主に「基本作業費」「人件費」「廃棄物処理費」「車両費」などから構成されます。
基本作業費には、仕分け・運搬・清掃などが含まれ、人件費は作業スタッフの人数と作業時間によって決まります。また、処分する物の量が多い場合や、大型家具・家電があると処理費が増加します。さらに、エレベーターなしのマンションや駐車スペースが遠い物件では、追加料金が発生することもあります。
これらの費用は業者によって大きく異なるため、複数社から見積もりを取ることが重要です。見積もりの際は、料金の内訳を細かく確認し、「追加費用なし」の明記があるかもチェックポイントとなります。価格だけでなく、サービス内容とのバランスを見て業者を選ぶことが、納得のいく遺品整理につながります。
費用を抑えるために活用できる制度や支援
遺品整理には費用がかかるため、経済的に不安を感じる方も多くいらっしゃいます。そんな時は、行政の制度や支援を活用することで、費用の負担を軽減することが可能です。まず、身寄りのない方が生活保護を受けていた場合、「葬祭扶助」という制度により、葬儀費用が一部または全額公費で支給されることがあります。
また、自治体によっては、遺品整理や清掃に関する支援制度や、専門業者の紹介を行っていることもありますので、役所の福祉課や生活支援課に相談するのがおすすめです。さらに、社会福祉協議会やNPO法人では、無料相談やボランティアによる整理支援を提供していることもあり、これを活用することで費用を抑えられるケースもあります。
物品のうち、まだ使える家具や家電などはリユースや買取を検討することで、費用の相殺が可能です。このように、複数の支援策を上手に組み合わせることで、無理のない形で遺品整理を進めることができます。
特殊な状況での対応方法

身寄りのない人が亡くなった場合には、通常の遺品整理や相続とは異なる対応が必要になることがあります。生活保護受給中の死亡や孤独死、入院時の保証人不在といった特殊なケースへの正しい理解と対応が求められます。
生活保護受給者が死亡した場合の行政対応
生活保護を受けている方が亡くなった場合、行政は「葬祭扶助」という制度を通じて最低限の葬儀を支援します。これは生活保護法に基づき、火葬や遺体の搬送、簡易な葬儀費用などを自治体が負担する制度です。
申請は故人と関係のある親族、または福祉事務所が行いますが、身寄りが完全にない場合は市区町村が対応し、行旅死亡人として処理されることもあります。葬祭扶助の上限金額は地域により異なりますが、おおよそ20万円前後が支給される目安です。申請には死亡診断書や見積書などの書類が必要で、事前に福祉事務所と相談しておくことが重要です。
なお、遺品整理や住居の明け渡しについては、行政が専門業者を紹介する場合もありますが、原則として扶養義務者や相続人がいればその方が対応することになります。生活保護受給者の死後は、迅速に行政と連携し、制度を正しく利用することが大切です。
孤独死が発見された場合の特殊清掃の必要性
孤独死とは、一人暮らしの方が自宅で誰にも看取られずに亡くなることで、発見まで時間がかかった場合には「特殊清掃」が必要になるケースがあります。特殊清掃とは、遺体があった場所の消臭・除菌・汚染物の除去を専門の技術と薬剤で行う作業のことです。
たとえば、遺体の腐敗により体液や臭気が染みこんだ床や壁の処理は、通常の清掃では対応できず、専門業者に依頼する必要があります。費用は作業の規模や状況により異なりますが、10万円〜数十万円になることもあります。孤独死の現場では、ご遺族や関係者が精神的ショックを受ける場合も多く、作業を外部に任せることで心の負担を軽減する効果もあります。
また、マンションやアパートでは、大家や管理会社との調整も必要で、対応が遅れると損害賠償の問題に発展することもあります。そのため、孤独死が発生した場合は、速やかに警察・行政と連携し、専門業者に相談して適切に清掃を行うことが大切です。
入院中に身元保証人がいない場合の手続き
入院中に身元保証人がいない場合、医療機関側は治療費の支払いや緊急時の対応に不安を感じるため、入院が断られることもあります。身元保証人とは、患者の代わりに連絡や費用の支払いを引き受ける人のことで、多くの病院では保証人の記載を入院時に求められます。
しかし、身寄りのない方や高齢の単身者などでは、保証人を立てるのが難しいことも多くあります。こうした場合に備えて利用できるのが、「身元保証サービス」や「死後事務委任契約」といった民間サービスです。これらのサービスでは、契約によって専門業者が入院時の対応や死後の手続きまで担ってくれます。
また、自治体や社会福祉協議会によっては、生活困窮者に対する入院支援制度やソーシャルワーカーによる相談窓口が設置されていることもあります。事前に福祉事務所などに相談し、必要に応じて制度や支援を活用することで、保証人がいない場合でも安心して医療を受ける準備が可能になります。
財産の相続と遺言に関する注意点

身寄りのない人が亡くなった場合でも、故人に関わった人が財産を受け取れる場合があります。また、相続されない財産は法律にしたがって処理されます。正しい手続きを知ることが、無用なトラブルを防ぐ鍵です。
特別縁故者として遺産を受け取るには
身寄りのない方が亡くなり、法定相続人がいない場合でも、一定の条件を満たす人は「特別縁故者」として遺産を受け取れる可能性があります。特別縁故者とは、亡くなった人と生前に特別な関係にあった人のことを指し、具体的には内縁の配偶者、長年介護をしていた人、事実上の扶養関係にあった人などが該当します。
遺産を受け取るには、相続財産管理人が家庭裁判所に選任されたあとで、「分与の申立て」を行う必要があります。申立てには、亡くなった方との関係性を証明する書類や、生活実態を示す資料(手紙や写真など)を提出します。認められるかどうかは家庭裁判所の判断となり、すべての申請が通るわけではありませんが、遺産を有効に活用するための大切な制度です。
なお、申立ての期限は相続財産管理人が公告を出してから3か月以内が原則ですので、タイミングにも注意が必要です。縁の深かった方の財産を、正当な手続きで受け取るためには、この制度の存在と活用方法を知っておくことが重要です。
相続されない財産はどうなるか
相続人がいない場合や、遺言や特別縁故者による請求がなかった場合、最終的に故人の財産は「国庫に帰属」することになります。これは民法第959条に定められているルールで、預貯金、不動産、有価証券などの資産がすべて国のものとなる仕組みです。
国に帰属するまでには、相続財産管理人による財産の調査・整理・債務の弁済などが完了したうえで、家庭裁判所の許可を得て行われます。財産が国庫に入ると、個人が受け取ることはできなくなります。特別縁故者としての申し立てをしなかった場合や、申し立てが認められなかった場合にも、財産は自動的に国へと移されます。
つまり、たとえ生前に親しい関係があったとしても、正式な手続きをしなければ財産を受け取れないということです。また、処分される前に相続財産の保全措置がとられることもあり、安易に処分や使用をすると法的トラブルになる可能性もあります。こうした背景からも、法的な手続きを理解し、正しい対応を行うことが非常に大切です。
生前にできる準備と対策

身寄りのない人が亡くなった場合の対応は複雑です。しかし、生前に整理や契約などの準備を行っておくことで、死後の混乱を防ぎ、財産や思いを適切に引き継ぐことが可能になります。今できることから始めましょう。
生前整理と財産管理の基本
生前整理とは、自分が元気なうちに持ち物や財産、重要な書類などを整理しておくことです。この準備をすることで、死後にまわりの人に迷惑をかけることなく、スムーズな手続きが行えます。まず行うべきは、財産の一覧作成です。
銀行口座、不動産、保険証券、年金手帳など、どこに何があるかをリストにまとめておきましょう。あわせて、不要になったものや使っていない物品は処分し、生活空間を整理整頓しておくことも大切です。また、スマートフォンやパソコンのパスワード、SNSやサブスクリプションの情報も整理しておくと安心です。
書類や情報は信頼できる場所に保管し、本人以外がアクセスできるような仕組みも準備しておくことが望ましいです。これにより、死後の遺品整理や財産確認がスムーズになり、トラブルの防止にもつながります。生前整理は、身の回りをきれいにするだけでなく、自分自身の人生を振り返る良い機会にもなります。
遺言書や死後事務委任契約の活用
財産の分け方や死後の手続きを明確にしておくためには、遺言書や死後事務委任契約の活用が非常に有効です。まず、遺言書とは、自分が亡くなった後の財産の分配についての意思を法律的に残す文書であり、公正証書遺言で作成すれば信頼性が高く、争いごとも避けやすくなります。
また、相続人がいない場合や、特定の人に財産を遺したい場合にも、遺言書が必要不可欠です。一方で、死後事務委任契約は、自分の死後に発生する手続き(葬儀・埋葬・役所への届出・遺品整理など)を第三者に委任する契約です。
契約相手は、友人・専門家・法人などで、契約内容を明記し、公正証書で作成するのが一般的です。この契約により、身寄りがない場合でも死後の手続きをスムーズに行うことができます。いずれも法的な効力を持つ書類のため、専門家に相談しながら作成することをおすすめします。遺言や死後事務の準備は、「終活」の一環として早めに検討することが大切です。
専門業者や信頼できる人への依頼方法
身寄りがない方が死後の手続きに備えるには、信頼できる専門業者や支援者に事前に依頼することが重要です。まずは、遺品整理や死後事務を専門とする業者を探し、複数の会社から見積もりを取り、実績や口コミを比較しましょう。
特に「一般廃棄物収集運搬許可」など、法的な資格を持った業者を選ぶことが安心につながります。また、任意後見制度を利用して、法律上の支援者を立てておくことも有効です。この制度では、自分の判断力が低下したときに備え、あらかじめ信頼できる人に財産管理や医療・施設契約を委ねることができます。
さらに、NPO法人や社会福祉協議会、地域包括支援センターでは、身元保証や死後の事務を引き受けるサービスを提供している場合もあります。重要なのは、「万が一のときに誰が何をしてくれるのか」を明確にし、契約書などの形で正式に残しておくことです。信頼できる第三者とつながりを持つことで、ひとりでも安心して人生を全うできる環境を整えることが可能になります。
まとめ
身寄りのない人が亡くなった場合、遺品整理や財産の管理は複雑な手続きが必要となります。警察や行政への連絡、相続財産管理人の選任、遺品整理の実施、そして最終的には財産の帰属先の判断まで、段階ごとの対応が求められます。
孤独死や生活保護受給中の死亡など、特殊なケースでは行政の支援制度を活用することが大切です。また、生前のうちに財産を整理したり、遺言書や死後事務委任契約を結んでおくことで、死後の混乱を防ぐことができます。身寄りがないからこそ、早めの準備と正しい知識が安心につながります。




