事件や孤独死の現場では、警察の捜査や検証が終わるまで、特殊清掃をすぐに始めることはできません。勝手に立ち入ると法律違反になるおそれもあり、警察の許可が必要です。
本記事では、特殊清掃と警察の関係や、作業を開始するまでの手続き、必要な許可、清掃の流れ、費用、信頼できる業者の選び方まで、事実に基づき分かりやすく解説いたします。正しい知識がトラブル回避につながります。
警察の関与がある現場で特殊清掃を行うには

事件や孤独死があった現場では、警察の捜査や検証が終わるまで、特殊清掃を始めることはできません。警察からの正式な許可や現場の「解放通知」を受けて初めて、清掃作業に取りかかることができます。正しい順序を理解しておきましょう。
事件現場での警察の検証と立ち入り制限
事件や不審死が疑われる現場では、まず警察が到着して検証作業を行います。これは、死亡の原因や事件性の有無を判断するために必要な重要な手続きです。警察官や検視官が室内の状態を調べ、遺体や遺品の位置、血痕、体液の広がりなどを写真やメモで記録します。
また、司法解剖が行われる場合もあり、その結果を待つ必要があることもあります。この検証作業が完了するまでは、現場は「立ち入り禁止」となり、たとえ家族や清掃業者であっても、無断で入ることは許されません。
証拠保全の観点から、現場の状況を少しでも変えると、警察の捜査に支障をきたすおそれがあるためです。許可が下りるまでは、清掃の準備だけにとどめ、指示を待つことが大切です。
特殊清掃の開始に必要な警察の許可とは
特殊清掃を始めるには、警察からの「現場解放」の許可が必要です。これは、警察がすでに検死や検証を終え、事件性がないと判断したうえで、これ以上証拠として必要なものがないと結論づけた場合に出されます。
許可が下りる前に現場へ入ってしまうと、証拠隠滅や妨害と見なされてしまうリスクがあります。現場解放の通知は、基本的に警察から遺族や不動産管理会社などに伝えられ、その後に特殊清掃業者が作業を開始します。
信頼できる業者であれば、警察との連携体制が整っており、許可が下り次第すぐに作業へ入る段取りを組むことが可能です。依頼者は焦らずに、警察の捜査が終わったかを必ず確認し、正式な許可を得たうえで依頼することが重要です。
許可前に作業するとどうなるのか?
警察の許可が出る前に特殊清掃を始めると、思わぬトラブルや法的責任が生じるおそれがあります。なぜなら、事件性がある現場では、家具の位置や血痕の広がりなど、あらゆる物が重要な証拠となるからです。
許可前に清掃を行うと、これらの証拠を壊してしまい、捜査の妨げになる可能性があります。最悪の場合、証拠隠滅の疑いをかけられたり、関係者として事情を聞かれたりすることもあるのです。
また、依頼者の知らぬ間に業者が勝手に入室し、清掃を始めてしまうようなケースもありますが、こうした業者は避けるべきです。適切な業者は、警察の許可が出るまで現場には立ち入らず、すべての手順を法的に整えたうえで対応します。
安心・安全な清掃を行うには、順番とルールを守ることが最も大切です。
特殊清掃の対象と一般清掃との違い

特殊清掃は、通常のハウスクリーニングとは異なり、事件現場や孤独死現場など特殊な状況に対応する専門的な清掃です。この章では、特殊清掃の定義や対応範囲、一般的な清掃との違いについて解説します。
特殊清掃の定義と具体的な対応範囲
特殊清掃とは、事件・事故・孤独死などによって発生した遺体の痕跡や体液、臭気などを取り除く専門的な作業のことを指します。通常の掃除では対処できない高度な技術や専門機材が必要で、消毒・脱臭・害虫駆除なども含まれます。
対象となるのは、遺体の腐敗が進んだ室内や血液・体液で汚染された場所、長期間放置されたゴミ屋敷などです。また、感染症のリスクがある場合や、臭いが壁や床に染みついている場合も特殊清掃の対象となります。
作業にはオゾン脱臭機や防護服、業務用薬剤などが用いられ、関係者や近隣住民への影響を最小限に抑えることが求められます。これにより、精神的・物理的に重い現場を安全かつ衛生的に原状回復するのが特殊清掃の役割です。
事件・事故・孤独死などの清掃事例
特殊清掃の現場には、さまざまなケースがあります。最も多いのは孤独死によるものです。遺体が長期間発見されなかった場合、体液が床に染み込み、強烈な臭気が発生します。このような場合は、床材の剥がしや消毒作業、オゾン脱臭などが必要になります。
自殺や殺人などの事件現場でも、血液や体組織が飛び散っていたり、壁や家具に痕跡が残っていたりするため、徹底した清掃が行われます。事故死の現場では、転倒や火災による汚染や臭気の処理が求められることがあります。
その他、ゴミ屋敷やペットの多頭飼育による悪臭・衛生問題の解消も特殊清掃の範囲です。これらの現場は精神的な負担が大きく、依頼者にとっても非常に辛い経験となるため、丁寧で配慮ある対応が求められます。
一般的な清掃とどう異なるのか
特殊清掃と一般清掃の違いは、その「目的」と「難易度」にあります。一般清掃は、日常生活の中で発生するホコリや汚れを取り除く作業であり、掃除機や雑巾など家庭用の道具で対応できます。
これに対し、特殊清掃は命に関わる現場を対象にしており、汚染度や危険度が非常に高いのが特徴です。たとえば、血液や体液には感染症のリスクがあるため、防護服や業務用の薬剤を使用しながら慎重に作業を進めます。
また、臭いの除去にはオゾン脱臭機などの専門機器が使われ、床や壁の張替えが必要になることもあります。さらに、遺族や関係者の心情にも配慮しながら作業を行う必要があるため、技術力だけでなく心理的なサポートも重要です。
特殊清掃は、清掃という枠を超えた「社会的支援」の一環ともいえる仕事です。
特殊清掃の作業工程と現場対応の実際

特殊清掃は、現場の状況に応じて作業手順が変わりますが、基本的には調査・清掃・消毒・脱臭・確認という流れで進められます。ここでは、現場での具体的な作業内容とその重要性を詳しく解説します。
作業前の現場調査と見積もり確認
特殊清掃を開始する前には、必ず現場調査が行われます。この調査では、部屋の広さや汚染の程度、臭気の強さ、体液の浸透状況などを細かく確認します。現場によっては床材や壁材の剥がしが必要なケースもあり、作業内容は多岐にわたります。
調査後には見積もりが提示され、作業内容ごとの費用内訳が説明されます。たとえば、清掃費、薬剤費、廃棄物処理費、脱臭費などが含まれます。見積書にはオプション作業の有無や、作業時間、スタッフの人数なども明記されるのが一般的です。
見積もり段階で不明点をしっかり確認しておくことで、作業後のトラブルを防げます。正確な現場調査と丁寧な説明が、信頼できる業者選びの第一歩になります。
清掃・消毒・脱臭までの具体的な流れ
実際の特殊清掃では、まず室内の安全確認を行ったうえで、汚染物の除去から始まります。体液が染みた布団や家具は袋に詰めて搬出され、感染リスクを避けるために専用の薬剤で床や壁を消毒します。
その後、体液が浸透している場合はフローリングや畳を剥がし、下地まで洗浄・除菌を行います。清掃が完了したら、次は臭気の除去作業です。ここではオゾン脱臭機やミスト噴霧器などを使い、空間全体の消臭を行います。
臭いの強さに応じて1日〜数日かかる場合もあります。最後に、作業完了後の確認として、再度消臭や衛生チェックを行い、異常がなければ完了報告となります。この一連の流れを的確に実施することで、安全で快適な状態へと原状回復できるのです。
遺品整理や原状回復の判断基準
特殊清掃では、清掃作業だけでなく、遺品整理や原状回復の判断も重要なポイントです。遺品整理は、遺族の意向を尊重しながら必要なものと不要なものを分け、処分や供養を進めていきます。
現場によっては、体液や腐敗臭が遺品に染み込んでしまっていることもあり、その場合は残念ながら処分対象になることもあります。また、床や壁に深刻な汚れや臭気が染み込んでいる場合は、原状回復工事が必要です。
これにはフローリングの張替え、クロスの交換、防臭・防菌施工などが含まれます。どこまで原状回復するかは、賃貸か持ち家か、管理会社との契約内容などにより異なります。
業者は現場の状況を踏まえ、遺族や管理者と相談しながら最適な方法を提案してくれます。作業は物理的な回復だけでなく、精神的な整理にもつながります。
事件現場特有のリスクと対応策

事件や孤独死などが起きた特殊清掃現場では、通常の清掃とは異なる深刻なリスクが伴います。ここでは、健康被害のリスクや精神的な影響、近隣住民への配慮について詳しく解説いたします。
感染症・体液処理における衛生管理
特殊清掃では、血液や体液などを扱うため、感染症のリスクが常に存在します。特にHIV、B型・C型肝炎、結核などのウイルスが潜んでいる可能性があるため、慎重な対応が必要です。
そのため、清掃作業には防護服・マスク・ゴーグル・手袋といった装備を着用し、感染防止対策を徹底します。使用する薬剤も、医療現場で用いられる高濃度の消毒液が基本となります。また、汚染された廃棄物は一般ゴミではなく、産業廃棄物として適切に処理されます。
これらの衛生管理を怠ると、作業者だけでなく、近隣住民にも健康被害を及ぼすおそれがあります。清掃業者が感染対策の知識と経験を持っていることが、安全で確実な作業を行ううえで不可欠です。
精神的ショックとその対処方法
特殊清掃の現場は、視覚・嗅覚・感情すべてに強い衝撃を与える環境です。遺体が長期間放置された現場では、腐敗臭や虫の発生、変色した床など、精神的なショックが非常に大きくなります。とくに依頼者である遺族が立ち会う場合、心の負担は計り知れません。
このため、多くの業者では作業中の立ち会いを避けてもらい、写真や報告書で対応するようにしています。また、作業員自身も強いストレスを受けるため、社内でのメンタルケアや外部カウンセリングを受ける体制が重要です。
精神的にきつい現場だからこそ、清掃技術と同じくらい「人の心に寄り添う姿勢」が求められます。対応力のある業者は、遺族の心情に最大限配慮した対応を行っています。
近隣トラブルを防ぐ配慮とマナー
特殊清掃では、近隣住民とのトラブルを避ける配慮も非常に重要です。たとえば、異臭が発生していた場合や、事件性のある現場では、周囲の人々が不安を感じやすくなります。そのため、業者は目立たない服装で訪問し、作業車にも社名を入れないなどの工夫を行うことが一般的です。
また、作業中の音や振動にも注意し、必要に応じて近隣に説明のチラシを配布することもあります。加えて、搬出時の通路やエレベーターを汚さないように保護シートを敷くなど、建物全体への配慮も欠かせません。
清掃の技術力だけでなく、「まわりの生活環境を守る意識」が信頼される業者の特徴です。適切な対応が、依頼者・住民双方にとって安心できる環境づくりにつながります。
特殊清掃にかかる費用と見積もりの注意点

特殊清掃は作業内容が多岐にわたり、現場の状況により費用も大きく変わります。この章では、費用の内訳や追加費用が発生するケース、見積もりの際に確認すべき重要ポイントについてご紹介します。
費用の内訳と相場の目安
特殊清掃の費用は、清掃内容や部屋の広さ、汚染状況によって異なりますが、基本的な内訳は明確です。主に「清掃作業費」「消毒・除菌費」「脱臭費」「廃棄物処理費」などが含まれます。孤独死や事件現場の1Kアパートであれば、相場は8万円〜30万円前後が目安とされています。
これに加えて、オプションで「畳や床の張り替え」「遺品の仕分け・搬出」「特殊な薬剤使用」などが発生することもあります。
見積もりの際は、どの作業が基本料金に含まれていて、どこからが追加費用になるのかを丁寧に確認することが大切です。事前に費用の構成を理解しておけば、予算オーバーやトラブルを避けることができます。
追加費用が発生する典型的なケース
特殊清掃では、事前に見積もった内容から変更が生じ、追加費用がかかることがあります。たとえば、作業を進める中で床下にまで体液が染み込んでいた場合、フローリングの剥がしや下地の処理が追加されることがあります。
また、害虫の大量発生や悪臭の強さにより、オゾン脱臭機を長時間稼働させなければならないケースもあります。さらに、作業後に原状回復のためのリフォームが必要と判断された場合、その工事費も別途かかります。
こうした追加費用は、現場の状況が想定以上だった場合に発生します。そのため、見積もり前には「どのような場合に費用が上がるのか」「追加費用の目安はいくらか」などを事前に確認しておくことが重要です。
見積もり前に確認すべき3つのこと
見積もりを依頼する前に確認すべきポイントは、大きく3つあります。1つ目は「費用に含まれる作業内容」です。清掃・消毒・脱臭の範囲がどこまでか、明細にしてもらいましょう。
2つ目は「追加費用が発生するケースと金額の目安」です。予想外の請求を防ぐためにも、何が別料金になるかを明確にしておくことが大切です。3つ目は「作業後のフォロー体制」です。再脱臭や異臭再発時の対応、作業完了後の報告書の有無なども確認しましょう。
この3点を事前に押さえておけば、後悔のない依頼ができます。また、複数業者に相見積もりをとることで、サービス内容と価格の妥当性を比較しやすくなります。信頼できる業者選びの第一歩は、丁寧な見積もり確認から始まります。
信頼できる特殊清掃業者を見極めるには

事件現場や孤独死の特殊清掃を安心して任せるためには、信頼できる業者を見極めることが不可欠です。許可や資格、対応力など、選ぶ際に確認すべきポイントを解説いたします。
警察対応経験と許可・資格の有無を確認
特殊清掃業者を選ぶ際には、警察との連携経験があるかどうかが非常に重要です。事件現場では、検死や捜査が終わるまで清掃を開始できません。そのため、警察との調整や許可取得に慣れた業者であれば、作業の進行がスムーズです。
また、遺品整理士や事件現場特殊清掃士といった資格を保有しているかも確認しましょう。さらに、一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬許可を持っていることも、安全に処理するためには欠かせません。
これらの要件を満たしていない業者に依頼すると、法的なトラブルにつながる恐れがあります。資格や許可の情報は、ホームページや見積書、契約書類でしっかり確認してください。信頼できる業者ほど、これらの情報を明確に提示しています。
見積もり対応・契約時の説明の丁寧さ
信頼できる業者かどうかを見極めるためには、見積もり時や契約前の対応も大切なポイントです。優良な業者は、作業内容や料金の内訳をわかりやすく説明し、不明点にも丁寧に答えてくれます。
特に、「どこからが追加費用になるのか」「どんな作業が標準に含まれているのか」といった細かい部分を丁寧に伝えてくれる業者は、トラブルが少なく安心して任せられます。逆に、質問しても曖昧な回答だったり、「すべてお任せください」とだけ説明する業者は注意が必要です。
また、書面での見積もりを出すかどうかも判断基準の一つです。事前のやり取りの中で、信頼できるかどうかをしっかり見極めておきましょう。親身な対応は、作業の丁寧さにもつながります。
清掃後まで安心できるアフター体制
特殊清掃の作業が終わったあとにも、気をつけたいのがアフターサポートの有無です。たとえば、脱臭作業後に臭いが再発することもあり、再作業の対応があるかどうかは重要です。
また、消毒や除菌に関して、再点検や報告書を提出してくれる業者は、品質管理がしっかりしている証拠です。さらに、作業完了後に住居のオーナーや不動産管理会社と連携し、現状回復の確認や補修提案をしてくれるケースもあります。
このように、作業後も丁寧にフォローしてくれる業者なら、依頼者は安心してその後の対応を任せられます。アフター体制の充実は、業者の誠実さと実績を示すバロメーターの一つです。依頼前に「万が一のときの対応」を必ず確認しておきましょう。
まとめ
特殊清掃は、事件や孤独死などの現場で行われる非常に専門的な作業です。特に警察が関与する現場では、検証や捜査が終わるまでは勝手に作業に入ることができず、警察の許可が必要になります。
作業内容は、体液や血液、臭いの除去、さらには感染症対策まで含まれ、一般的な清掃とは大きく異なります。費用は現場の状況により変動するため、事前の見積もりと契約内容の確認が重要です。
また、信頼できる業者を選ぶには、許可や資格、警察との連携実績などをしっかり確認することが大切です。この記事を通して、特殊清掃と警察の関係や正しい対応方法について、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。




