故人が亡くなったあと、銀行口座の手続きは多くのご遺族が直面する重要な作業のひとつです。遺品整理を進めるなかで、「通帳が見つかったけどどうすればいい?」「口座っていつ凍結されるの?」といった疑問を抱える方も少なくありません。実際、手続きにはさまざまな書類や相続人の確認が必要で、順序を間違えると時間や手間が余計にかかってしまうこともあります。
本記事では、故人の銀行口座の扱い方や解約までの流れ、専門家の活用法まで、わかりやすくご紹介いたします。
手続きを始める前にやるべき基本準備

故人の銀行口座に関する手続きは、感情的にも負担が大きいものですが、正確な準備をすることでスムーズに進められます。まずは、どの金融機関に口座があるかを把握し、必要な書類をそろえるところから始めましょう。
故人の口座情報と金融機関を調べる方法
銀行口座の手続きを始めるには、まず故人がどの銀行に口座を持っていたかを確認する必要があります。そのためには、遺品の中から通帳、キャッシュカード、振込記録のある書類などを探すのが有効です。もしそれらが見つからない場合は、公共料金の引き落とし先や年金の振込口座などから金融機関を特定できることがあります。
また、故人が使っていたスマートフォンやパソコンにログインし、ネットバンキングの履歴やメール通知から銀行名を確認する方法もあります。金融機関が判明したら、直接窓口に問い合わせることもできますが、その際には故人との関係を証明する戸籍謄本や死亡届のコピーが必要となります。
遺族であっても、銀行側は個人情報保護の観点から厳密に対応しているため、事前に必要書類を確認してから訪問することをおすすめします。情報収集の段階では、焦らず丁寧に証拠を集めることが、後の手続きを円滑にする鍵となります。
通帳・印鑑・本人確認書類などの準備ポイント
銀行口座に関する相続手続きを行うためには、いくつかの重要な書類をそろえておく必要があります。主なものとしては、故人の通帳やキャッシュカード、届出印(銀行に登録している印鑑)、そして本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)が挙げられます。
もし印鑑や通帳が見つからない場合でも、銀行によっては代替手段を案内してくれるため、あきらめずに相談してみましょう。加えて、相続人側も戸籍謄本や印鑑証明書などを準備しておくことが求められます。これらは市役所や区役所で取得可能です。
さらに、遺言書がある場合はその内容によって手続きが変わるため、公正証書か家庭裁判所の検認を受けたものを提出する必要があります。準備不足によって手続きが長引くケースも多いため、必要な書類はチェックリスト形式で事前に整理しておくと安心です。早い段階で遺品整理を進め、関連書類を丁寧に保管しておくことで、余計な時間や手間を省くことができます。
銀行口座はいつ凍結される?対応の流れと注意点

故人の銀行口座は、死亡が確認された後に凍結され、引き出しや振込ができなくなります。凍結のタイミングや、それによって発生する影響を理解しておくことで、トラブルや混乱を防ぐことができます。
名義人の死亡後に凍結されるタイミングと影響
銀行口座は、名義人が亡くなったことを銀行が知った時点で凍結されます。つまり、死亡届の提出日ではなく、銀行側に遺族などから連絡が入ったタイミングで凍結される仕組みです。凍結されると、預金の引き出しや振込、公共料金の自動引き落としなど、すべての取引が停止されます。
たとえ家族であっても、口座の名義人でなければ勝手にお金を動かすことはできません。この凍結は相続手続きが完了するまで解除されないため、残された家族が生活費や葬儀費用の支払いに困るケースもあります。したがって、複数の銀行口座がある場合は、事前にどの口座を生活費や支払い用に使うかを家族で話し合っておくことが重要です。
また、死亡の事実が広まることで銀行以外の金融機関(証券会社、クレジットカード会社など)も凍結を行うため、影響は想像以上に広がります。銀行口座の凍結は、相続手続きの始まりを意味する大切なステップですので、冷静に対応する準備が必要です。
凍結前にしてはいけない行動と安全な対応策
故人の死亡が確認された後、口座が凍結される前に「お金を引き出しておこう」と考える方もいらっしゃいますが、これは非常に危険です。たとえ遺族であっても、正当な手続きを経ずに預金を引き出すと、後に他の相続人から「不正な取り扱い」として問題視される可能性があります。
また、法的には「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれもあります。こうしたリスクを避けるためには、死亡の事実を知ったらすぐに銀行に連絡し、凍結処理を依頼することが大切です。そして、必要な費用(葬儀代など)がある場合は、相続人全員の同意を得たうえで、所定の手続きによって引き出しの申請を行う方法を選びましょう。
銀行によっては、一定の条件を満たせば葬儀費用などを引き出せる制度を設けている場合もあります。勝手な対応はトラブルのもとになりますので、わからないことがあれば、銀行の窓口や司法書士に相談しながら慎重に対応するのが安心です。
相続・解約手続きに必要な書類と取得先

銀行口座の相続や解約手続きを進めるには、いくつかの重要な書類が必要です。遺言書の有無や相続人の状況により求められる書類が変わるため、事前にしっかり確認し、漏れなくそろえることが大切です。
遺言書がある場合とない場合の違い
銀行口座の相続手続きでは、遺言書の有無が手続きの内容に大きな影響を与えます。まず、遺言書がある場合は、その内容に従って口座の相続や解約が進められます。特に公正証書遺言であれば、家庭裁判所の「検認」が不要となり、比較的スムーズに手続きができます。
一方、自筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要となり、提出や手続きに時間がかかります。遺言書がない場合は、法定相続人全員で「遺産分割協議書」を作成し、それをもとに銀行手続きを行います。この協議書には、相続人全員の署名・実印、印鑑証明書が必要です。
つまり、遺言書がない場合は、全員の合意が必須となるため、話し合いがスムーズにいかないと手続きが長引く恐れがあります。遺言書の有無に応じた手続きの流れを理解し、必要な準備を整えておくことが、トラブル回避と迅速な対応のポイントになります。
金融機関や市区町村で求められる主要書類一覧
銀行口座の相続や解約には、多くの書類が必要となります。主に求められる書類としては、以下のようなものがあります。まず、故人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)と住民票の除票が必要です。これにより、相続人の確定や死亡確認が行われます。
次に、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)も求められます。さらに、相続の方法によっては遺言書や遺産分割協議書が必要となります。これらの書類は、市区町村役場や法務局、家庭裁判所などで取得できます。
また、銀行によっては「相続手続依頼書」や「残高証明書の請求書」など、独自の書類を指定している場合もあるため、事前に金融機関へ確認しておくことが重要です。書類が一部でも不足していると、手続きが中断されたりやり直しになることもあるため、チェックリストを作成して漏れなくそろえるよう心がけてください。
銀行への連絡から預金解約までの手順

故人の銀行口座を解約するためには、まず死亡の連絡を銀行に行い、その後、相続人の確認や必要書類の提出を経て、最終的に預金の払い戻しや分配が行われます。順を追って丁寧に進めることが大切です。
銀行へ死亡を伝える方法とマナー
銀行口座の手続きを始めるには、まず故人の死亡を銀行に伝える必要があります。この際、最寄りの支店に電話をするか、直接窓口へ出向いて連絡するのが一般的です。電話で伝える場合は、「故人の名前」「口座の有無(分かる範囲で)」「死亡日」「相続人としての関係」などを簡潔に伝えるとスムーズです。
来店する際には、死亡診断書のコピーや住民票の除票、故人との関係を示す戸籍謄本などを持参すると、手続きが早く進みます。なお、銀行によっては、相続専用の相談窓口や書類請求フォームを設けていることもあるため、公式サイトを事前に確認すると安心です。
マナーとしては、突然の連絡であっても落ち着いて丁寧に対応し、職員の指示に従うようにしましょう。大切な資産に関わる手続きであるため、焦らず、確実に進める姿勢が信頼される対応となります。
相続人確定から分配完了までの流れ
銀行口座の相続手続きでは、まず相続人を正式に確定させることから始まります。これには、故人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めて、誰が法定相続人かを確認する必要があります。その後、相続人全員の戸籍や印鑑証明書、本人確認書類などを用意し、銀行指定の「相続手続依頼書」に必要事項を記入します。
次に、遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は「遺産分割協議書」を作成して、誰がどれだけ相続するかを明らかにします。協議書には相続人全員の署名と実印が必要です。銀行が書類を確認し、不備がなければ手続きが進み、相続人の口座へ預金が振り込まれる流れとなります。
処理には通常2週間〜1か月ほどかかりますが、書類に不備があればさらに時間がかかるため、慎重に準備することが重要です。相続人間で話し合いがまとまっていない場合は、遺産分割調停などに進む必要があるため、早めに司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
預金計算書や残高証明書の受け取り方
故人の預金状況を正確に把握するためには、「預金計算書」や「残高証明書」の取得が必要です。これらの書類は、銀行に対して正式に請求を行うことで発行してもらえます。請求するには、相続人であることを証明する戸籍謄本、故人の死亡届または住民票除票、申請者の本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)が必要です。
銀行によっては専用の請求用紙が用意されており、それに記入して提出します。多くの場合、発行には数日から1週間程度かかります。残高証明書は、相続税の申告や遺産分割協議の資料としても使用されるため、必ず取得しておくことをおすすめします。
また、請求者が相続人代表でない場合は、他の相続人の委任状が必要になることがあります。発行手数料は銀行によって異なりますが、1通あたり1,000円〜2,000円程度が一般的です。書類の内容や用途をきちんと把握し、目的に応じて必要なものを漏れなく請求することが重要です。
銀行手続きを専門家に依頼するメリット

相続や遺品整理にともなう銀行手続きは、慣れていないと複雑で時間がかかります。司法書士や行政書士、遺品整理士などの専門家に相談することで、正確かつスムーズに進めることができ、精神的な負担も軽減されます。
司法書士・行政書士に頼れる場面とは
銀行口座の相続手続きでは、多くの書類を準備し、相続人全員の合意を得たうえで適切に進める必要があります。このような煩雑な手続きを安心して任せられるのが、司法書士や行政書士です。たとえば、遺言書の検認手続きや、遺産分割協議書の作成サポート、戸籍の収集、相続関係説明図の作成などは、司法書士が得意とする分野です。
また、行政書士は金融機関への提出書類の作成や、相続人の代理として手続き全般を行うことが可能です。特に、相続人が多数いる場合や遠方に住んでいる場合、手続きを専門家に任せることで時間や労力を大きく減らせます。さらに、相続登記(不動産の名義変更)を同時に進める場合も、司法書士に依頼すればワンストップで対応できます。
相続や銀行手続きに不慣れな方、手続きのミスを避けたい方にとって、専門家の存在は非常に心強いものです。早めに相談し、必要な場面で適切にサポートを受けることが、円滑な手続きのカギとなります。
遺品整理士に相談すると役立つケース
銀行手続きと直接関係がなさそうに見える遺品整理士ですが、実際には非常に有用なサポーターとなる場合があります。たとえば、通帳や印鑑、遺言書などの重要書類がどこにあるか分からない状況では、遺品整理士が遺品の仕分けや探索を丁寧に行ってくれます。
とくに、部屋の中が散らかっていたり、孤独死の現場だった場合など、精神的なショックもある中で家族が自力で探すのは大きな負担です。そうした場面で、経験豊富な遺品整理士に依頼することで、必要書類の早期発見や銀行手続きのスムーズな着手につながります。
また、遺品整理士は銀行手続きに詳しい司法書士や行政書士と連携している場合も多く、ワンストップで相談できる体制を整えている業者も存在します。さらに、不用品の処分やリサイクルの手配も行えるため、遺族にとっての負担をトータルで軽減してくれます。専門家と連携しながら、必要な書類と心の整理を同時に進められることが、遺品整理士の大きな魅力です。
手続きをスムーズに進めるための注意点

銀行口座の相続手続きは、書類の不備や誤解によって遅れやトラブルが起こりがちです。よくある失敗や誤認識を知っておくことで、手続きを円滑に進め、無用なストレスを防ぐことができます。
よくある失敗例とその防止策
銀行口座の相続手続きでよくある失敗のひとつが、必要書類の不足による手続きの遅延です。たとえば、戸籍謄本が出生から死亡まで連続していない、印鑑証明書の有効期限が切れているなどのミスが見られます。また、遺言書があるにもかかわらず、検認手続きを行わずに提出してしまい、銀行側に受理されないケースもあります。
こうした失敗を防ぐためには、まず銀行や専門家に確認しながら、必要書類をリストアップすることが重要です。さらに、相続人間の認識違いからトラブルになることもあります。遺産分割協議書の内容についてきちんと合意が取れていないと、手続きが途中で止まってしまうこともあるため、相続人全員での話し合いと確認が不可欠です。
また、口座が複数ある場合は、それぞれの銀行で必要な書類や手続きが異なることにも注意が必要です。事前の情報収集とスケジュール管理が、スムーズな手続きを実現するカギとなります。
相続放棄と銀行口座手続きの意外な関係
相続放棄をしたからといって、すぐに銀行口座に触れても問題ないと思っている方が多いですが、これは大きな誤解です。相続放棄の手続きが完了する前に預金を引き出したり、通帳を使って振込などの操作を行うと、それが「単純承認」とみなされ、相続放棄が無効になる可能性があります。
単純承認とは、相続財産を受け取ったり処分したと判断される行為を指し、法律上は相続する意思があるとみなされます。そのため、相続放棄を予定している場合は、いかなる手続きも行わず、家庭裁判所で正式に放棄が認められるまでは一切の財産に手を触れないことが基本です。
また、他の相続人が同様に行動してしまうと、全体の手続きに影響を与えることもあります。銀行への連絡や必要書類の収集は、放棄の意向を示すだけではなく、行動の一つひとつが法的に見なされる可能性があるため注意が必要です。相続放棄を検討している方は、必ず事前に専門家に相談し、行動に移す前に確認をとるようにしましょう。
まとめ
故人の銀行口座に関する手続きは、遺品整理と並行して行う必要があり、法律や書類の準備など複雑な面が多くあります。まずは通帳や印鑑、戸籍などの必要書類を揃え、銀行に死亡の連絡を行いましょう。
その後、相続人を確定し、必要に応じて遺言書や遺産分割協議書を提出して手続きを進めていきます。手続きの途中でよくあるミスや、相続放棄との関係についても注意が必要です。
不安がある場合は、司法書士や遺品整理士といった専門家に相談することで、確実かつスムーズに対応できます。複雑な相続手続きを正しく理解し、落ち着いて対応することが、トラブルを防ぎ、遺族の負担を軽くする第一歩となります。




